【HD-2D版ドラクエ3リメイクレビュー】フルプライスの価値は感じないが、ゲームとしては楽しめた

先日発売されたドラクエ3リメイクを購入した。新作ではないものの、シリーズの中でも特に人気が高く面白いドラクエ3に新要素や追加ボスが加わっており、個人的には十分楽しむことができた。自分の周りにもそこまで悪い評判はないように思う。しかし、プレイ中にいくつかの不満を感じたことも事実なので、これから購入する人の参考になればという気持ちでそれらの点について話していきたい。

これをHD-2Dと言って良いのか?

今作は「HD-2D版」と銘打たれているが、過去にHD-2Dの基盤を築いたオクトパストラベラーシリーズと比較すると、少々疑問を感じる部分がある。

私がオクトパストラベラーが出た時に感動した理由は、AAAタイトルのような高精細な3Dグラフィックとは異なる方向性で、それらと同等の価格を支払う価値をユーザーに感じさせるだけのポテンシャルがある技術だと思ったからである。しかし本作は、背景や置物なども3Dモデルに丁寧にドット絵を貼り付けていたオクトパストラベラーとは異なり、3Dマップを2Dキャラが歩いているだけの「なんちゃってHD-2D」に見えてしまい、正直フルプライスを払うだけのこだわりのある画作りではないように感じた。

特に、キャラクターの2Dイラストが懐かしさよりも「妥協した」印象を与えてしまっており、個人的には3Dモデルを用意できないNPCの立ち絵にドット絵を採用したドラクエ9のような中途半端な古臭さを感じてしまった。

戦闘画面の不満

もう一つ、画作りについての不満を特に感じたのは戦闘シーンである。雑魚敵のグラフィックが非常に小さく、だだっ広い背景との対比で浮いてしまっている。オクトパストラベラーでは背景の作り込みとドット絵の統一感、強い画面効果によってミニチュア感が演出されていたが、モンスターが正面に配置されてまじまじとプレイヤーが見る構造であるために、リアルな背景に2Dイラストがちょこんと配置されていることでモンスターが画面から浮いてしまっている。

また、少なくとも2Dキャラを扱った時点で、3Dゲームなのにも関わらず2Dゲーム特有のゲーム特有のカメラの視点を回転できない制約を負ってしまったわけであり、相当演出や背景をリッチにしなければ他の3Dゲームに並ぶ迫力を出せないはずだが、それを挽回するような特に優れた演出やこだわりがあるようにも思えなかった。

総じてグラフィックス面で言えば、他のフルプライスで購入できる作品が提供しているクオリティに匹敵する価値を持っているとは言えないと感じた。これは「3Dでないとダメ」とか「オープンワールドじゃないとダメ」などの大枠の話ではなく、オクトパストラベラーのような約8000円の価格に見合う細かいこだわりを、遊んでいる側として感じることができなかった、ということである。

ただし、ゲームプレイ自体に関しては、大きな不満はなかった。自分は世代的に移植版しか遊んだことがないが、ドラクエ3という作品そのものが魅力的なため、無難に楽しめた。もし元のドラクエ3を面白いと思った人であれば、今作も問題なく楽しめるはずである。

また今作は、オーケストラBGMの素晴らしさやモンスターのモーションなど、細かい点での作り込みや良い点をプレイするなかで感じられる点はリメイクとして優れていると思うので、ドラクエシリーズが好きで値段を気にしない人であれば、ぜひ遊んでみてほしい。少なくともプレイしたことを後悔するような出来ではないことは確かである。