またイナズマイレブンが炎上している
イナズマイレブンというサッカーをテーマにしたメディアミックス作品で、登場人物である豪炎寺がVtuberと画面上で共演し、そのVtuberの配信を見ていたというセリフを言う場面がX(旧Twitter)で炎上し、私のところにもその話題が流れてきました。
正直、私はこのプロモーションの方法は悪手だと思います。
私もイナズマイレブンの大ファンで、最初のシリーズが放映されていた頃は校庭で「ファイアートルネードごっこ」をしていたイナイレキッズだった。
なんだかんだで、これまでに出ている本編のゲームはすべて遊んでおり、今度発売される「英雄たちのヴィクトリーロード」も楽しみにしていて、リリースを心待ちにしている。
プロモーションが炎上につながった悲劇
プロモーションに対する違和感は以前から感じていた。
YouTubeでβテスト段階にもかかわらず「公式大会」と称して配信をしているのを見たときには、それならリリース延期をこれ以上しないでほしいと思ったが、開発時間を稼ぎつつユーザーを引き留めようとする意図があるのだろうと理解し、文句を言う筋合いはないと納得していた。
それらの一環として、イナイレ好きなVtuberたちがイナイレ関連のプロモーションをしていたため、おそらくは延期せずにリリースされることを見越して打っていた広告活動が行われていたのだろう。
しかし、その中で豪炎寺が「対談相手のVtuberの配信を見ている」という趣旨の発言をして、それが例のツイートをきっかけとしてネット上で議論が起こっているのである。
Vtuberが2次元キャラと関わるリスク
対談しているVtuberを私は失礼ながら存じ上げなかったが、人気ではあるもののVtuberに興味がない層でも知っているほどは有名な方ではないらしい。
正直なところ、その方をピンポイントで知っているという点で、取ってつけたようなセリフだなという印象を持ったが、それはさておき、個人的に違和感を持ったのは、Vtuberの持つ性質によるものだ。
私は現状、Vtuberに対して「イラストをつけた配信者」という以外の感想を持っていない。
これは褒めているわけでも、けなしているわけでもない。
ただ、いわゆるストーリーを演じきる系のVtuberをほぼ知らず、知っていても既に引退しているためである。
それぞれの方に設定があるという反論もあるかもしれないが、その方々も雑談では「リアル」に基づいた話をするはずで、その時点で「主」は中の人になるはずであり、あくまで「主」がキャラで「従」が声優やイラストレーターとなるアニメキャラのような2次元の存在とは異なる3次元の存在でしかなくなると個人的には考えている。
また、私が知る限り、ホロライブのVtuberはそのような実在する配信者として活動しているスタイルの方が多い印象があり、当該Vtuberも同様に「3次元に存在する人物」として活動していると考えている。
要するに、Vtuberのリアリティラインが実在の人物に近いと感じるため、3次元と2次元が安易に混ざったときの違和感、いわゆる芸能人と2次元キャラクターが対話しているような違和感を感じてしまうのだ。
そのような状況下で人物像に触れるエピソードをしゃべってしまったがゆえに、今回の炎上が発生してしまったのではないかと思う。
イナズマイレブンの初期にも実在するサッカー選手をモチーフにしたキャラクターが登場していたが、あれはGO2における歴史上の人物のような扱いであり、違和感を感じなかった。
もし選手本人がCM出演にとどまらず、本編の声優になってキャラクターと絡んでいたら、違和感を感じただろうが、あくまで2次元の存在であったため許されていた(少なくとも当時の私はなんとも思わなかった)のだと思う。
公式は中途半端に古参に媚びないでほしい
また、懐古主義に偏りすぎかもしれないが、少なくとも初期作品における豪炎寺修也は時代背景的にガラケーを使っていたはずだ。
イナズマイレブン関連のゲーム作品でも、時代が進み登場人物の世代が変わるにつれて、ブログをモチーフにしたコンテンツがTwitter(X)モチーフやLINEモチーフに変わるなど、時代に応じたリアリティラインを守っていた。
しかし、今回のプロモーションでは、いや、アレスの刻印シリーズ以降全てに言えることだが、公式がそれらの文脈を無視し、豪炎寺クローンを作り出してしまったように感じる。
時代に合わせて設定を進化させていくのはむしろ歓迎すべきことだし、アレス時空の豪炎寺は無印時代とは違う存在だという解釈もできなくはない。
しかしそれならば、そもそも豪炎寺修也という「過去の象徴」にすがるのはおかしいはずだ。
その名前を出してしまった時点で少なくともファンは過去の面影を追い求める訳で、それらの「厄介オタク」を振り切りたいなら、完全新規キャラを軸にプロモーションをかけるべきだった。
過去と決別せずに中途半端に変更を加えようとしたことで生まれてしまった悲劇だと言える。
これは、作品自体の時代感をその世代に合わせて変更していくことへの了解を長い間一貫してとろうとしてきた長期作品たちの例、例えばポケットモンスターシリーズにおけるサトシが年を取らないという矛盾に対して了解をとっておくことによってスマホをモチーフにした形態のポケモンをサトシが使っても許されるということとは真逆である。
リアリティラインを守っていたはずなのに、それを突然投げ出すのは、キャラクターの崩壊と言わざるを得ない。
最後に
今回の炎上が半ばネタとしてX上で消費されていることを観測してしまったことも、個人的には悲しい。
レベルファイブのメディアミックス系の作品群が新作を思うように出せていないことは明らかであり、ネット上では同社がネタにされる対象になってしまっているように思う。
今回のプロモーションに関わった担当者やVtuberも、誰も悪意を持って行動していないにもかかわらず、Vtuberに対する批判も巻き込んで一部で半ばネタにするような批判が起こってしまったのは、キャラ崩壊に真剣に怒りを抱く層は既にアレスの刻印の時点で離れており、現在は半ば諦めのついた古いファンたちだけがコンテンツを見守っているためだろう。
それでも私は一ファンとして早く続編が見たいし、もし既存のIPをうまく扱えないのであれば、過去と決別し、新しい層に訴えかける努力をしてほしいと願っている。