「ジャンプ暗黒期説」の到来
最近、『呪術廻戦』のニュースが話題になったことで、「ジャンプが暗黒期に入ったのではないか」という言説が囁かれ始めている。
確かに、かつての黄金期の作品群と比べれば、アニメ化されなければジャンプ読者以外には注目されないような中堅どころの作品が大半を占めている気がする。
しかし、個人的には作品の平均的な質が高いおかげで、定期連載の雑誌としては十分楽しめている。
一方で暗黒期説への反論として、「これだけ期待できる作品がある」「アニメ化すればヒットするものもあるはず」という意見も見られる。
しかし、それはジャンプ本誌が単なるアニメ原作の製造場になりつつあることを示しているとも言えるし、従来のジャンプに期待されていた「最強の漫画が載っている雑誌」としての役割を今後も果たし続けられるかと言うと、現状の「普通に面白い」漫画が並ぶラインナップでは難しい気がする。
面白い漫画は十分揃っているが…
確かに、『サカモトデイズ』や『アオのハコ』など面白くて追っている作品の数自体は他の漫画雑誌と比べても多い。
しかし、それらに対する熱量が他誌の作品を追う熱量と比べて特別高いかと言えば、そうでもない。
つまり、ジャンプで満足できる作品はあるものの、それがジャンプ特有の魅力でもなくなってきているということだ。
今後ジャンプの主力となるだろう作品群を見ても、『ワンピース』以外に一般層に浸透しそうな作品は現状見当たらない。
例えば、『アオのハコ』の千夏が『ワンピース』のルフィのようなポジションに行けるかというと、恋愛ものとしての制約があるため、アニメや恋愛シミュレーションゲームくらいしか展開の余地がない。
『サカモトデイズ』も面白いが、良くも悪くも漫画としての面白さにとどまっていて、ジャンプらしい看板作品として一般層を惹きつけることができるかは微妙だ。
『カグラバチ』は看板になりそうなポテンシャルは感じるものの、始まって間もないこともあり判断がつきにくい。
「ジャンプ=王道」ではなくなることの是非
暗黒期かどうかを考える際、作品の質そのものではなく、漫画好き以外にも浸透しうるパワーがあるかが重要だと考えると、これからのジャンプは難しい舵取りを迫られるだろう。
アニメ化される作品が多いことも、中堅層が強いことを示している一方で、クール内のアニメ全体の中で支配力を持つ作品になるかというと、やはり微妙なところだ。
例えば、最近のジャンプ作品で話題になった『マッシュル』も、「Creepy Nutsの歌にアニメが掛け合わさったことでバズった」以上の意味があったかと言えば、疑問が残る。
果たしてダンスを踊っていた人たちの間に2クール目の内容を知っている人がどれくらいいたかということや、歌がアニメの高評価に直接つながるわけではないという当たり前のことを、Youtubeのアニメレビュアーによるマッシュルの低評価動画とそのコメント欄を見て感じてしまった。
とはいえ、現状のジャンプを雑誌としては楽しめている以上、今後の方針については読者がどうこう言うことでもない気もするし、ジャンプがジャンプたり続ける必要が今の時代にあるかはわからない。
ただ、いち漫画好きとしては、ジャンプは単なる定期購読している雑誌の一つではなく、最強で王道のコンテンツが載り続けている王者であってほしいとも願っている。