<漫画レビュー>男女両方が愛おしいオタクに刺さるラブコメ『クラスで2番目に可愛い女の子と友達になった』

昨今のラブコメの特徴

2024年の夏アニメが始まったが、今季注目の作品の一つに『負けヒロインが多すぎる』というラブコメ作品がある。

ライトノベル原作のラブコメは、かつて一大勢力を誇っていた。

しかし、2010年代後半にかけて異世界ファンタジーがいくつもヒットしたことをきっかけに、近年現代モノの純粋なラブコメは減少傾向にある。

その中で、ヒロインが主人公に恋をしないこの『負けヒロインが多すぎる』や

コスプレ作りという要素を足した『着せ替え人形は恋をする』、

複数のヒロイン全員と付き合う『君のことが大大大好きな彼女』など、

独自のアイデアを盛り込んだラブコメが人気を獲得するようになってきている。

特に「ハーレムだけど〇〇」「ヒロインと付き合わない」といったアンチラブコメ的な作品がアニメ化される傾向にある。

アニメ化企画が進行中!

このような潮流の中、KADOKAWAは代わらぬペースでラブコメをメディアミックスしている数少ない出版社だ。

クラスで2番目に可愛い女の子と友達になった』は2023年9月、角川スニーカー文庫からアニメ化企画が始まることが発表された。

タイトルからも分かる通り、この作品はサブヒロイン的な要素を持つおとなしい少女をメインヒロインに据えることで、「クラス一の美少女がヒロイン」というラブコメの定番を逆手に取ったメタ要素を巧みに取り入れた面白さが特徴だ。

あなたがラブコメの作者だったとして、明るい髪色で天真爛漫なヒロインと黒髪でおとなしい性格のヒロインを作った時、メインに据えようと思うのはおそらく天真爛漫なヒロインだろう。

しかし、ファンなどによる人気投票ではサブヒロインが一位になることも多い。

その理由としてメインヒロインがストーリーの進行上活動的で明るい王道な性格を求められる一方、サブヒロインは役割的な余白があるため、作者の理想を詰め込みやすい事が挙げられるだろう。

その結果今作のヒロインはむしろ読者としては魅力的なキャラに写ることになる。

主人公・前原真樹は、ヒロインの朝凪海とインドア派でB級映画マニアという共通の趣味を通じて意気投合する。

オタク趣味に理解のあるヒロインという、最近の流行に近いキャラ設定だが、ここで一つの問題が浮上する。

主人公とヒロインの趣味や性格が似ているため、キャラが被ってしまうのだ。

しかし、それが本作の魅力につながっている。

穏やかで甘い関係性のラブコメ

ラブコメでは、性格の違いからくるすれ違いが物語の軸になることが多い。

しかし、本作では趣味や性格が一致しているため、二人の間ですれ違いが起こらない

それでも彼らのやり取りが楽しめるのは、主人公とヒロインが仲を深めていく様子が平穏に描かれていくからだ。

「クラスで2番目」という言葉に対するヒロインの葛藤などの、外部との関わりの中でトラブルが起こる一方で、2人は一緒にいて落ち着く友人として、平和に仲を深めていく。

あくまで友人を求めて接近した関係だからこそ、じれったくも緩い独特の雰囲気が作中全体に流れている。

「クラスで2番目に可愛い」と言いつつ、読み進めるうちに一番好きになってしまうような魅力的なキャラクターをメインヒロインに据えている。

オタクに刺さる巧みなキャラ造形がなされている本作を、アニメが放送される前に読んでみるのはいかがだろうか。